働くことは、命と引き換えにするほど大事か?
働くってそんなに大事?
以前、『「やりがいのある仕事」という幻想』(森博嗣・朝日新書)を読みました。
普段なら絶対に読まないであろうタイトルの本なのですが。
森氏のファンなので、読んでみた次第です。
ビジネス関係の本だから、落ち込むかもな、と思いながら読んだのですが。
これほど、読んでよかったと思う本はなかった!
オビには、「働くことって、そんなに大事?」という衝撃的な言葉が。
そう、この本は、そもそも、「就活自殺」をしてしまう若者たちに向けて書かれた本なのです。
就活が上手くいかなくて、追い詰められて自殺を選択してしまう。
その気持ち、分からなくはありません。
私は、今も療養中の身で。
これから先も、フルタイムで働けるようになることはないといわれています。
そんな人間は、役立たずで、社会のお荷物だ、と思っていました。
しかし、この本は、それが思い込みであり、幻想である、ということに気付かせてくれました。
まさに、目からうろこでした。
仕事=自分の価値ではない
「仕事に勢いが持てなくても、凄い成果が残せなくても、人が羨む職業に就けなくても、きみの価値は、かわらない」
「人は働くために生まれて来たのではない。どちらかというと、働かない方が良い状態だ。働かない方が楽しいし、疲れないし、健康的だ。あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである」
そう、まさにその通りだと思います。
人間はいままで、どうすれば最小限の労働で大きな仕事をなすかを考えてきました。
そのために、科学・技術は発展してきました。
そもそも、人間が働かずに済むように、人間は社会を便利にしてきたのです。
だから、仕事に就けない人間が出てくるのは、当たり前。
仕事がどんどん減っているからです。
それに対し、人間はそんなに勢いよく減っていません。
だから、少ない仕事を取り合わなければならなくなるのです。
仕事に貴賤はないし、仕事をしているから偉いわけでもない。
無理をして働く必要もないし、仕事にやりがいを感じる必要もない。
人は仕事で価値が決まるわけではないし、好きなことを仕事にするのが最良とも限らない。
質素な生活ができる人は、時々働いて、のんびり生きればいい。
稼ぎたい人は、どんどん働けばいい。
「未来への不安」というのは、生きていることとほぼ同じ。
それがない人間ははっきり言って馬鹿だ。
好きなことを仕事にするに越したことはないが、好きではなくても、自分に向いていることを仕事にするのも、社会貢献である。
どんな仕事も、恥ずかしい仕事なんてない。
今、多くの人が口にする、「仕事のやりがい」というのは、戦後に大きく経済が成長した時期の人たちが作り上げた幻想であり、現代にも当てはまるわけではない。
とまぁ、かなりかいつまんではいますが、そういった内容でした。
本当に、数々の意見に、納得しました。
人によっては、冷たい意見だ、と思うかもしれません。
でも、私はこの本に書かれていることに、救われました。
仕事への偏見
働けないこと=自分には価値がない、というのは大きな間違いで。
犯罪を犯さず、まっとうに生きているだけで、私は社会に充分貢献している。
仕事に対する思い込みは、妄執ともいえるもので。
もうそれは、偏見とさえいえるほどのもので。
私は私自身に、偏見を抱いていたのだ、と思い知らされました。
仕事ができる人が偉くて、できない人はダメだと、思い込んでいました。
その考え方はおかしいんじゃない?と、早く気付くことができて、よかった。
悩んでいるなら
著者の森氏は、一般的な職業に就いていた人ではありません。
なので、今、バリバリ働けている人には、この本は必要ないと思います。
でも、少しでも仕事に悩んでいたり、仕事をしていない・仕事に就けないことで悩んでいる人には、一読の価値があるかもしれません。
少なくとも、私には安い買い物でした。
「仕事観」をひっくり返してくれたのですから。
命と引き換えにするようなものではない
「働くことって、そんなに大事?」
そう言うと怒る世代が、まだまだ現役です。
でも、私は思います。
命と引き換えにするほど、働くことは重要ではありません。
生きていることこそが、大事なのです。
自分が楽しめることの方が、大事なのです。
好きなことをするために、賃金を得る手段として、働いているのです。
働くことが人生の目的である必要は、どこにもありません。
それを目的にしたい人は、すればいい。
でも、それをみんなに押し付けてはいけないのです。
この本は、かなり時間をかけて読みました。
これからも、何かあるたびに、この本を手に取ることでしょう。
考え方を変えることは難しいけれど、この本はいとも簡単に私の仕事観をひっくり返してくれました。
その新しい仕事観で、私は私の人生を、歩いていきたいと思います。