距離感がつかめない
距離感がわからない
私はどうやら、距離の感覚がおかしいようです。
物と自分との距離感がつかめないのです。
我が家の洗面台には、壁際に、子ども用の踏み台が置いてあります。
子ども用とはいえ、大人でも使えるもので、かれこれ、25年は使っています。
立ち位置がわからない
洗面台にいるときに、たまたま、いつもある踏み台が使用中で、その場にないことがありました。
洗面台の前に立ったとたん。
私の足の位置が、分からなくなりました。
足の位置が分からなくなったというより、壁と自分との距離が分からなくなってしまって、空間の隙間に落ち込んだような、落ち着かない変な感覚にとらわれました。
いつもは、それ以上壁側に寄れないはずの、空間。
その空間の不安定さに、不安になる。
そして、自分の存在している位置まで、不安定になって。
自分の身体が、実際に存在しているのかどうか分からなくなるような感覚。
実に、不思議な感覚でした。
意味が分からないかもしれませんが、とにかくそんな変な感覚がありました。
距離感の問題
自閉っ子は、物や人と、自分との距離感がつかみにくい、と言われています。
だから、歩いていてもものにぶつかったり、人にぶつかったりするのだ、と。
私も、まっすぐの廊下を歩いているのに、壁にぶつかることがよくあります。
下手をすると、ドアにも激突します。
洗面台の前にいるときは、無意識に壁にかかっているタオルを握って、壁との距離を測っているようなこともあります。
いつも同じ位置にあるものなら、何となく体が距離感を覚えています。
だから、何とかぶつからずに済んでいることも多いです。
しかし、物が移動していたら?
人間みたいに、常に動いているものだったら?
自分との距離を、常に計測していなければ、無意識に避けることは難しいです。
自分も動いていたら、なおさら。
人と一緒に歩いていても、すぐに隣の人にぶつかります。
ぶつからずに歩こうと思うと、今度は変に離れて行ってしまいます。
人と並んで歩くって、とっても大変なことなんです。
距離を保つのは高度な技術
自分との距離を常に計測する、というのは、結構しんどいことです。
だから、人混みではすごく疲れます。
自分と、多数の人間との距離を、常にレーダーで観測して、どこを通るか、進路を決めねばならないのですから。
多数派さんはきっと、上手に無意識に対物レーダーを働かせて、自動で距離を計算することができるのだと思います。
それを、少数派は手動で行っているようなものなのかな、と思います。
踏み台ひとつないだけで、自分の存在感覚さえ危うくなる。
そんな不安定な世界で生きていることを、少しだけでも、知ってもらえたらな、と思います。