共感できないのではなく
自閉症スペクトラム者は、自分と似た境遇の人の書いた話の方が、理解しやすい。
そんな研究結果の記事を、最近よく目にします。
私も、それは正しいと考えています。
実際に生活をしている中で、多数派の人の考えていることって、正直良くわかりません。
一体何を考えてそんな行動をしているのか。
なぜ、そんな非合理的なことを平気でしているのか。
いつも、不思議です。
私たち少数派が、多数派に対して思うように。
きっと、多数派の人たちは、少数派の私たちのことを、そんな風にとらえていることでしょう。
同じ世界に住む人
多分、こちら側の世界の人間だろう、と思う作家の小説は、すんなりと頭に入ってきますし、感覚的な部分もすごく理解できます。
逆に、多数派の書いた本は、理解しにくい部分があります。
自閉症の子どもと、お互い言葉を一言も交わさずに、少し離れた場所から関わりあったことがあります。
その子は、置いてあったノボリ(旗)をひらひらさせて、じっくりと見ながら、楽しそうに遊んでいました。
私もそれを見ていることに気付いたその子は、私を見ながら、またノボリをひらひらさせて、見せてくれました。
私が、「それ、楽しいよね。おもしろいよね。」と心の中で話しかけ、笑いかけると、その子はとても嬉しそうに、ニコニコして、もっと激しくノボリをひらひらさせてくれました。
同じ「自閉」という世界に住んでいる人間同士なら、言葉を介さなくても、コミュニケーションが成立するのです。
これを、共感と言わずして、なんというのでしょうか。
共感できないというのは、間違い
私は、自閉症者は、共感能力に乏しいと言うのは、間違いだとはっきりと言います。
同じ自閉の世界に住んでいる人同士が、テレパシーのようなコミュニケーションが取れる可能性を指摘している人は、すでにいました。
当事者であったり、学校の先生であったり、立場はいろいろですが。
研究者は今頃気づいたのか、と思ってしまいます。
自閉症者が共感能力に乏しいと思われるのは、多数派との共感が難しい、というだけであって、決して共感能力がないわけではないのです。
人を思いやることだって、できます。
同じような、自閉の世界の住人なら、「きっとこの人はこういう風に感じているんだろうな、だからこういうことをしたんだろうな」って、考えることだって、あります。
「パニックになってる。大丈夫だよって、伝えてあげたい」そう思うことだって、多々あります。
多数派さんのことはちょっとよくわからない
ただ、多数派とは見ている世界が違うので、多数派さんの求めることを、してあげることはできないかもしれません。
多数派さんとは違う方法で、慰めてしまったり。
多数派さんの望む方法とは違う方法で、関わってしまったり。
それはもしかしたら、多数派さんにとっては、失礼だ!と感じてしまうかもしれません。
思いは同じ
少数派だって、多数派と同じように、人の役に立ちたいし、いろんなことを考えています。
多数派さんが望まない行動をとる。
そういうところだけを見て、共感能力がないなんて、結論付けないでほしいのです。
多数派であれ少数派であれ、行動の裏には、必ず何かしらの理由があります。
理由もなく行動することは、ほとんどないでしょう。
その理由は、本能的なものかもしれません。
本人にさえ、きちんと把握できる理由ではないのかもしれません。
前進はしている
共感力がないわけではない、という研究結果が出てきただけでも、少し理解がすすんだのだろうか、と期待しています。
これからもっと、多数派と少数派、お互いの理解が進むことを、期待したいと思います。