社会性の障害について
社会性の障害について
前々回の「想像力の障害」、前回の「コミュニケーションの障害」に続いて、今回は「社会性の障害」についてお話ししましょう。
社会性の障害
・向かい合っていても視線が合わない。
・無理に視線を合わせようとすると嫌がって視線をそらしたり、顔をそむけたりする。
・名前を呼んでも、耳が聞こえていないかのように反応しない。
・人に関心を示さず、そばに人がいてもまるで誰もいないかのように振る舞う。
・他の子供に興味がなく、一緒に遊ぼうとしない。
・一人遊びが多く、大人が一緒に遊んであげようとすると嫌がる。
・異様にマイペースで、自分のペースを崩されると怒る。
・迷子になっても平気で、助けを求めることがない。
・母親を求めない、後追いをしない。
・敬語が使えない
など
以上が、よく言われる社会性の障害です。
主に子どもの行動を書いていますが、大人にも社会性の障害はあります。
視線が合わない
これは、コミュニケーションの障害としても、取り上げられます。
人間は通常、コミュニケーションを行う際、目と目を合わせて、言葉に表しきれない情報を、やり取りしています。
しかし、自閉症スペクトラム障害の人には、そのような非言語的コミュニケーションは、非常にわかりにくいものです。
また、目と目が合うと、とてつもない恐怖を感じます。
ガラの悪い人に、ガン飛ばされる状態を思い描いてください。
多数派さんでも、ぎょっとすると思います。
自閉症スペクトラム障害の人にとって、目と目が合うということは、そのくらい怖いことなのです。
自閉症の人は、人間と動物の間の駅のような存在
目と目を合わせて会話をすることがマナーなのは、人間だけだと言われています。
ネコやイヌなどの動物にとって、相手の目を見つめるというのは、「ケンカを売る」という行為だそうです。
相手に対し敵意があり、相手の目を見て威嚇をするのです。
自閉症スペクトラム障害の人は、古代の人間の感覚を残し持っているとも言われています。
自閉症の動物学者として有名な、テンプル・グランディン博士は、「自閉症は人間と動物とをつなぐ、駅のようなものである」とおっしゃっています。
そう考えると、自閉症スペクトラム障害の人が、相手の目を見ることに恐怖を感じることは、当たり前だと考えられます。
遺伝子に組み込まれた、無意識の感覚で「威嚇されている」と感じてしまうのかもしれません。
呼びかけに反応しない
呼びかけても反応しないということに関しては、「誰に対してよびかけているのかが分からない」ということがあると思います。
突然「ねぇ、○○のことなんだけど…」と話しかけられた時。
多数派さんは、即座に、それが自分に向けられた言葉なのか、他人に向けられた言葉なのか、判断できるようです。
しかし、自閉症スペクトラム障害の人は、それが判断できません。
そもそも、自分に話しかけられている、という感覚がないのです。
だから、「無視をしている」ように見えてしまうのです。
また、何かに熱中しているときに話しかけられても、気付きません。
一つのことに集中してしまうという特性があるためです。
その特性は、時には寝食をも忘れてしまうほどのものです。
ですので、ちょっとやそっとの呼びかけでは、反応できません。
他人に興味がない
他の人に興味がなく、関わらないというのは、1人で自分の世界で、自分のルールで遊んでいるのが楽しいからです。
自然とたわむれたり、何かを考えたりするのが楽しいからです。
そこには、他人は必要ありません。
だから、敢えて他人に関わり行く必要はないのです。
他人に関わらなければ、自分のペースを崩されることもありません。
他人に関わるということは、自分の世界に他人を入れることです。
他人が入ってきた途端、自分の世界は崩れてしまいます。
他人が入ってこなければ、自分で作り上げた、安定した世界で穏やかに過ごすことができます。
しかし、周囲は他人に合わせ、一緒に行動することを求めます。
それは非常にストレスのかかることです。
コミュニケーションがうまく取れない状態で、他人とかかわることは、とてもエネルギーを消費します。
そんなにエネルギーを消費してまで、他人とかかわる必要があるのだろうか?
私はそう思っています。
敬語が使えない
敬語が使えないことに関しては、ある程度の年齢にならないと、特性として把握できません。
健常の子であれば、小学校中学年くらいになれば、上下関係というものを認識して、年上の人に対して丁寧語で話すことができるようになります。
しかし、自閉症スペクトラム障害の人の場合、相手の立場が上であろうと、いわゆるタメ口で話してしまいます。
これは、社会的には非常に問題のある行動です。
上下関係に厳しい日本では、特に問題となります。
しかし、自閉症スペクトラム障害の人に悪気はないのです。
良くも悪くも、誰に対しても「対等」なのです。
相手の社会的立場など関係なく。
相手を、1人の人間としてとらえているのです。
自分と同じ、対等な1人の人間として。
世の中で一番、相手を平等に扱っているのかもしれません。
それはある意味、凄いことだと思っています。
障害について考えることは、みんなが生きやすい社会について考えること
障害と言ってしまえば、それまで。
しかし、少し見方を変えれば、それは能力かもしれない。
「社会性って、なんなのか?」
自閉症スペクトラム障害の人の障害を考えることは、多数派さんも含め、みんなが生きやすい社会について、考え直すきっかけとなるかもしれません。